福祉用語の解説⑱ ~ 防衛機制(心を守る) ~
福祉用語の解説⑱、今回は『防衛機制(心を守る)』について書きたいと思います。
”防衛機制”というと、何だか難しく感じてしまいますが、実は簡単です。
一言で言えば、”自分の心を守るために、人間が無意識に取る行動”の事です。
人間は脳の発達と共に心も進化させてきた動物です。
心も進化したが故に複雑になり、複雑になった心の在りようをメンテナンスしていくために防衛機制的な仕組みが発達してきたのではないかと個人的には
考えています。
少し、難しい言葉が並びますが、防衛機制と呼ばれるものをご紹介したいと思います。
【抑圧】・・・ショックな出来事や不快な感情を単純に抑え込む事。
(例:ショックな出来事をそのまま忘れる。)
→ わかりやすく言えば、”我慢する”、”なかった事にする”というイメージかも知れません。戦争に行った兵隊の方が悲惨な戦争の話をしたがらないのもこの抑圧の一種だと考えられます。そうやってご自分の心の傷に触れないようにする事を抑圧と呼んでいいかと思います。
【否認】・・・現実の出来事を、現実として受け入れないこと。
(例:重篤な病気と宣言されたが、間違いであると認めない)
→ 災害などのパニックの際に、その状況を認めずに普段と同じように行動しようとしてしまう、”認知バイアス”にも似ています。
【合理化】・・・行動の真の理由を隠すために、もっともらしい理由を作る事。
(例:イソップ童話の「取れなかったブドウは美味しくなかったのだ」が有名。)
→ いわゆる言い訳です。言い訳する事で自分の行動を正当化し、自分の心を守る行動です。
【昇華】・・・欲求を、社会的に望ましい活動へのエネルギーに向けること。
(例:性衝動を部活動に熱中することで発散する。)
→ 昇華は良い防衛機制の例です。特に思春期などはこの防衛機制を身につけると成長を促す事が出来ます。
【投影】・・・自分のある種の感情や衝動、考えが自分の中にあると認めず、それを他者に投げかけること。
(例:後ろめたい気持ちを「みんながジロジロ見ている」と思う。 あるいは 「lineを送って、既読になったが返信がこない。恐らく私の事を大切に思っていないに違いない」と考える。等 いわゆる責任転嫁。
→ 他責であり、ネガティブ思考です。自己肯定感を下げ、あまりいい影響を自分にも周囲にも与えません。このような防衛機制を持っている人はかなり多くいます。陥らないポイントは”本当にそうか?”と他者に自分の感情を投影する前に客観的に分析してみる事です。
あるいは、”~かも知れない”とポジティブに考えなおす事で、自分の思考の調整が可能になります。
【反動形成】・・・受け入れがたい感情や衝動を抑圧するために、それと反対の感情や衝動を示すこと。
(例:喫煙したい人が、禁煙のメリットを過剰に説明する。嫌いな人に丁寧に接する。好きな人に素っ気なく振る舞う。好きな子をいじめる。)
→ 男性に多い行動かも知れません。頭ではわかっていても、それを素直に実施出来ない行動と心の矛盾がこのような行動になって現れるのだと思われます。
【知性化】・・・感情を本気で感じる事を避けるため、浅い知的レベルで理解しようとすること。
(例:自分の深い心の傷に直面することを避けるために、心理学を好んで学んで理屈で理解しようとする。知識を用いて客観的に理解しようとする高度な防衛機制)
【同一化】・・・叶わない願望や自分にないもの、自分ではどうにもできない事柄を、それを持つ他者になったかのように感じたり、振る舞ったりすることで虚無感を埋めようとすること。
(例:子どもを持たない人が他人の子の服を作ってあげる)
→ これも上手くやれば、自分のマイナスに捉えプラスに転化出来る防衛機制だと思います。この防衛機制により他者に貢献されている方は数多くいらっしゃるはずです。
様々な防衛機制をお伝えしてきました。防衛機制とは本能的な心の動きですので、それが起こるのは仕方がない事かも知れません。
防衛機制と上手く付き合っていくために必要な事は、『自分の感情を素直に需要する事』、『”○○でなければならない”と思い込みを捨てる事』です。
防衛機制と上手に付き合いながら楽しい人生を歩んでいきましょう!!